はり灸
久保田針灸院
電話 0463-68-6505
2023年7月より電話番号変更しました。

鍼灸の科学的知見

近年、鍼灸の効果に対して科学的な検証が進んでいます。鍼灸では昔から東洋医学的な理論、すなわち陰陽五行説、気血の流れといったものでその効果を説明してきました。昨今では鍼灸の世界的な広がりを受け、科学的な側面からのアプローチもさかんに行われています。その一部をご紹介します。
鎮痛効果
鍼灸は痛みに対して効果を発揮することがよく知られています。それは何故なのでしょうか。この問いに答えるには体に備わっている痛みのメカニズムに対する理解も必要になってきます。
1、筋肉をゆるめる
鍼灸院に来られる方に多い、肩が凝る、腰が痛いといった症状は筋肉が硬く張った状態のことが多いです。筋肉はもともと伸びたり縮んだりして体を動かしていますが、何らかの原因で緊張状態が長く続くと縮んだまま元に戻りにくくなります。この状態のときに体を動かすと痛みが生じやすくなります。そして、この緊張している部分に鍼をするとその緊張がゆるむということが実証されています。緊張がゆるむと体が動かしやすくなり、可動域が広がることが多いです。
2,血流を良くする
上記のような筋肉が縮んで硬くなった状態ですと、そこを通る血液の流れが悪くなります。するとその部分に老廃物が溜まりやすくなります。老廃物の中にはブラジキニンなど発痛物質と呼ばれる痛みを神経に伝える物質も含まれているので、これもまた痛みの原因となります。そしてそのような部分に鍼の刺激を加えると血流の増加が起こり、溜まっていた老廃物が新鮮な血液によって流れていきます。これは軸索反射と呼ばれる、神経伝達物質を介して血管が広がる現象が起きるからです。この現象は鍼をしたその部分が一定時間赤くなることによって確認できます。
3,緊急事態に痛みを感じないメカニズム
大昔、人類が狩猟時代の頃、傷を負ったからといって、ゆっくり休んでいられない状況が多くあったはずです。敵から逃げるとき、獲物を捕まえる時などに痛みがあるとかえって命の危険にさらされる場合など、緊急事態に痛みを感じないメカニズムというものが人間には備わっています。炎症など痛みがある部分に鍼をすると、その周囲に集まってきた免疫細胞が内因性オピオイドという物質を出すことが確認されています。これは痛みを脳に伝える信号を途中でブロックする物質(神経伝達物質)として知られています。これを人工的に合成したものとしてモルヒネなどがあります。
4,下降性疼痛抑制系
全ての痛みは脳で感じます。体のある部分に刺激が加わるとその信号が脊髄に伝わり、さらに脳に伝わり痛みとして感じます。ですので脊髄で痛みの信号をブロックしてしまえばたとえケガを負っていても痛みを感じないことになります。人間の体の仕組みとしてこのように脳から指令を出して脊髄に働きかけ、痛みを感じにくくする機構が存在します。これを下降性疼痛抑制系と言いますが、鍼刺激が加わるとこの機構が活性化することが分かってきました。痛み信号をブロックするという点では先程の3と同じですが、脳からの指令(下降性)によって脊髄で痛み信号をブロックするという点、従って全身に作用する点が違います。脳の仕組みは複雑でまだ解明されていない事も多いので、そこに鍼刺激がどの程度関わっているのかはさらなる研究が待たれるところです。
参考文献 東洋医学はなぜ効くのか 講談社ブルーバックス

